葬儀屋としてヤクザの世界から学んだ事

葬儀の小話

当時は、その世界のまんま

私が業界に入った頃、その道の人が一人。その関係者が一人。そして社長がその道の人の親戚。という環境でした。

今でこそタトゥーとかいって平気で見せてるけど、当時は一般人、いわゆるカタギに対しては恥ずかしいものだったから隠すのが当たり前。

だから夏場でも長袖。最初はなんでやろと思っていたんですが、汗でうっすらと見えた時に理解しました。

アンコ業界に入った時は地方にもよく行ってたんですけど、そこの場合は、村会議員がヤクザ。「あの人の名前を読む時は気をつけや」と、そこの社長によく言われたもんです。

共通する風土というか、気質みたいなものはヤクザな世界そのまんまでした。法的な縛りは最低限あるけど、ルールは自分たちで決めている。

はみ出しモンが多かったし、サラリーマンなんて絶対ムリな人がほとんど。仕事がない時は自由気ままに喫茶店で時間を潰し、勤務中なのに雀荘に入り浸り。

宿直は徹夜で麻雀。賭け事大好きで貯金なんて聞いた事もない。でもいざ仕事(カチコミ)となると人が変わったようにやる。そんな人ばっかりでしたから、まさにヤクザと一緒の世界です。

オジキやアニキを担当する事もありましたから

そんな背景を持った業界だったので、知り合いだったり、知り合ってしまったりと、公私に渡ってその世界の人と関わる事も多かったんで、その関係の葬式もよくやってました。

暴対法なんてない時代。ある組織の企業舎弟にあたる人の息子さんが亡くなった。超緊張状態の飾り付けの最中、やたら話しかけてくるヤバそうな人。

明らかにラリってるんですが、相手にしない訳にもいかない。その業界の人はおしぼりが大好きでやたら使う。しかも分厚めがお好み。

その人は何度も何度もおしぼりを使って顔を拭き、「兄ちゃん、この札はここでええんか?」と、供花の芳名札の順番を聞いてくる。

命懸けやで

この頃はソレ系専門に受けている葬儀屋には、歴史と共に刻まれた順番表と花札を持っていたんで知り合いなら借りることができた。

フルスペックで並ぶ場合を想定して各方面の方の肩書きと名前が書いてあるので、素人でも順番がわかるんです。

その業界の方にとっては名前は命。という事は芳名板もその方なんです。それをですね、そのラリっている人が踏んでしまった。

そこへ一般人で言えば地区ブロックの部長みたいな、まあ上の人が仕上がり状況を視察にきた訳です。

当然、踏み跡の付いた札なんて見せたら命懸けの話。咄嗟に隠したら、そのラリった張本人は行方不明。バックれやがった。

一般人がよくいう「必死でやりました」とか、「命懸けやね」なんて言葉は、あの世界の方にとってはマジな話になる。

必死は必ず死ぬという事だし、命懸けは失敗したら命を失うという事。だからその場は真剣そのもの。

さっきのラリってる人も、弔問に来た親分が式場に入ってきた瞬間、別人のような俊敏な動きでさっと立ち上がり「ご苦労様です!」には、まあ、びっくりしましたわ。

勉強になる事は多かったですよ

あの業界の方でもできる人もできない人もいる訳で、できる人は四方八方に神経を張り巡らせて空気を読んでいる。なので一歩が早い。

相手の目上の方に失礼な事をするというのは、自分の親分に恥をかかせて顔を潰す事になるからまさに命懸けで、物事の見極めが鋭い。

そんな空気を何度か吸っているうちに人の心を読むというか、場の空気を感じる事に鋭くなってきた自負はあります。

いつまでも意味なく立たせている答礼場の親族への配慮のなさ。出棺前に祭壇から下ろした遺影写真を平気でペタンと寝かせる無神経さ。これ、芳名板どころか本人の象徴なんでしばかれまっせ。

そんな誰も気にしない事でも、あの業界の方は命懸けなんで真剣さが違うし、そこまで見えているから配慮できる。そんな事をこっちも命懸けで学ばせてもらいました。

ヤクザと葬儀屋の関係

ヤクザな仕事と言われていた世界。今はネットを駆使して集客するという、IT業界のように思う若い人もいると思いますが、くれぐれもご用心を。

葬儀業界にそんな風土は無くなったとしても、世の中には存在するんです。企業舎弟として、企業ヤクザとして確実に存在はしているので、葬儀屋はどこかで関わる事になります。

そんな時に、あの眼光鋭く、まさに命懸けの世界で生きてる人から見たら、甘ちゃんの葬儀屋はなんて事はない存在。いつで簡単に型にハメられますからね。

どんな風貌の方でも、自分の物差しで判断して見下していたら大怪我しますよ。どのような方でも真摯に向き合い、正直な商売をする。

実に簡単な事なんですけど、油断という穴に自ら飛び込むのが人間の性なんですよ。IT知識が高くても、それだけで世の中が回っている訳じゃない。調子に乗っていると墓穴を掘りますので。

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