『葬送儀礼から直葬へ』弔いの変化を防げなかった罪人たち | ページ 7 | 直葬は、間違ってます by 三日坊主

『葬送儀礼から直葬へ』弔いの変化を防げなかった罪人たち

「朝日新聞デジタル 2018年2月4日05時00分の記事」より引用

■もっと多様な形でいい

家族を送った体験談やお葬式についての意見が、アンケートに寄せられています。

 ●「先週夫の父を、3年前に実父を送りました。どちらも慌ただしくわからないまま葬儀社の方のアドバイスで葬儀をしました。事前に考えておくことも必要だったかもしれませんが、カタログを見ながらあっという間に用意ができるのはありがたい半面、何か買い物をしているような不思議な気持ちも少ししました。それでも、残った人が心置きなく送ったと思えることが大切だと思うのでこの形も悪くないかなと思ったりもします」(愛知県・50代女性)

 ●「結婚式のように、葬式も時代に応じてもっと形式が多様になってもいいのかなと思う。故人やその家族の希望に応じたオーダーメイド形式の葬式が今後は増えてくるのではないか」(愛媛県・20代男性)

 ●「一昨年父を亡くして実感したが、葬儀やその後の法要などは、故人のためだけでなく残された者が少しずつ死を受け入れてその後を生きていくために必要な行事でもあった。母から葬儀はいらないと言われているが、なにもしないことは考えられない」(大阪府・30代女性)

 ●「昨年、母の葬式を出しました。危篤状態の時から葬儀屋さんと打ち合わせ。自分が考えていた『一日家族葬無宗教 お香典ご辞退』で済ますことができました。四十九日にお寺で戒名をいただき納骨しましたが、最後まで『相場』が謎。思い切ってご住職にうかがったら、想定の3分の1。聞いて良かったと思っています」(千葉県・50代女性)

 ●「本人が望まない限りは、葬儀は必要ないと思います。お坊さんの収入源であるのは理解できますが、信仰心がない者にとっては無駄なお金でしかありません」(海外・40代男性)

 ●「戒名料は結構高い。個人的に疑問に思うことは親から付けてもらっている名前があるのに、なぜ天国に行くのに戒名料が必要なのか。時代が変わってきているのに、おかしい」(宮城県・60代女性)

 ●「長男の嫁です。義両親の際、看病があり、葬儀を終えるにはかなりな体力を要しました。仮通夜のようなこともしましたのでご近所の方々もいらっしゃり、通夜、本葬では義兄弟の連れ合いの親戚や勤める会社の方々も多数来られました。帰宅直後、義兄弟から『誰からいくら香典をもらったか?』と電話があった時には虚無感だけでした。ゆっくりと義親を悼むことが出来たのはかなり後です」(大阪府・50代女性)

 ●「葬式は祭りなのでにぎやかに」(東京都・50代男性)

 ●「確実に孤独死になると、覚悟しています。いくばくかの現金を封筒に入れて、目につくところに置いておくのが迷惑をかけない方法と思っています」(広島県・60代男性)

 ●「家族葬でと近親者だけで行ったつもりだったが、後から他界を知った人が訪れ葬儀の終わりがダラダラと続いた感じがした。ある程度の範囲の人々に知らせれば告別式一度で済んだのかもしれない。わざわざ訪ねて下さった方に来なくてもよかったとも言えないし、これが家族葬の欠点かと感じた」(宮城県・60代男性)

 ■不透明なお布施、不信感

 埼玉県深谷市の会社員、松本江美子さん(53)からメールが届きました。寺との付き合いを断ち、家族だけのこぢんまりした葬儀を営んだと言います。詳しく聞いてみました。

 きっかけは5年前、84歳で亡くなった父の葬儀でした。母は認知症で施設に入っていて、寺との付き合いは父任せでした。相談相手もいないなかで、葬儀社から祭壇や棺のランクなどを次々に尋ねられました。

 戒名料を含めたお布施はいくらか僧侶に聞くと「15万円から」と言われました。「から」が気になりましたが、15万円を払いました。1カ月後、友人の父が亡くなり、同じ僧侶でした。友人へはお布施として「35万円から」と求めたそうです。「お布施が不透明で、不信感が残りました」。四十九日法要は僧侶を呼ばず、家族だけで納骨しました。

 昨年12月、90歳の母が亡くなりました。インターネットで調べ、定額の葬儀を提供する業者に頼みました。僧侶へのお布施も含めて20万円。紹介された僧侶とは火葬場で初めて会い、お経をあげてもらい、3万円を渡しました。母に戒名はなく、四十九日法要もしません。

 墓は父が生前に民間霊園にたてましたが、「子どもたちに墓守をさせたくない」とその墓を閉じ、永代供養墓に父母の遺骨を納めます。自分が亡くなれば、海に散骨してもらいたい。子どもたちにも伝えました。

 家に仏壇はありません。部屋に両親の写真を飾って線香を供え、話しかけています。松本さんは「遠くにあって、なかなか行けないお墓より、身近にある写真や大切なもののほうが追慕できると思います」と話しています。(岡田匠)

 ■葬儀の平均費用、140万~150万円

 経済産業省の特定サービス産業動態統計調査から算出した2000年以降の葬儀1件当たりの平均費用は、140万7千~152万1千円の範囲で推移しています。特定サービス産業実態調査によると、14年の葬儀業者の年間売上高は推計1兆3700億円にのぼります。

 15年に全日本冠婚葬祭互助協会がインターネットアンケートで「お布施を除いたお葬式の費用」を尋ねたところ、1990年までに営んだ葬儀では「51万~100万円」が最多でしたが、それ以降は「101万~150万円」が最多に。葬儀の参列者数はどの時期も「51~100人」が3割以上を占めて最も多いものの、「11年以降」で「30人以下」が急増し、2割を超えています。

 また、16年度に互助協会が行った香典に関するアンケートによると、香典の額は故人が親類以外の場合は5千円と回答した人が最多で、「親」が10万円、「兄弟姉妹」が3万円、その他の親類が1万円でした。

 葬儀をめぐっては、09年に流通大手のイオンが明朗会計や格安料金を売りに葬儀業界に参入。近親者らで小規模に営む「家族葬」も人気が高まっています。「終活」は、12年の「ユーキャン新語・流行語大賞」でトップ10入りしました。

 僧侶との関係も変化しています。「お気持ち」とされていたお布施や戒名料を明示する寺院が現れ、16年には通販サイトのアマゾンを通じて申し込める僧侶の手配サービス「お坊さん便」に仏教界が反発、中止を要請しましたが、サービスはいまも継続しています。(田中聡子)

 ■個人化の時代、規範しばられずに 葬送ジャーナリスト・碑文谷創さん

 少なくとも江戸時代から太平洋戦争後の復興期まで、お葬式は地域共同体を中心に、慣習に従って行われていました。檀家(だんか)制度の影響を受けた仏式で、場所は自宅かお寺。それが大都市周辺へと人口が集中した1960年ごろから、都市部の住民が葬祭業者へ「外注」して任せる動きが出てきました。地域共同体の弱化や寺離れなどもあり、80年代までに全国へ広がります。葬儀の会葬者数が増えてバブル期には平均300人に。うち7割が死者本人を直接知らず、遺族は弔いよりも会葬者に失礼がないよう気づかいました。

 90年代に入ると葬儀会館が各地にできて、自宅や寺での葬式が消えていきます。地域も親戚も手を引き、遺族は孤立し、葬祭業者を頼らざるを得なくなる。特に阪神大震災以降、葬式は「個人化」に大きくかじを切りました。

 そのころまで9割を占めた仏式が最近は7~8割と減っています。寺と普段から関係があるのは地方でも5割程度。僧侶も派遣でいい、となる。小規模な「家族葬」が全体の3分の2を占めますが、最も簡素化志向が強いのは60、70代以上。この世代は会葬者への気づかいで大変だった親の葬式での苦い経験を悔い、子に迷惑をかけたくないという人が多いんです。ただし家族葬には明確な定義がなく、喪主である子どもが死者のきょうだいや友人の参列を拒んだりするといった混乱も起きています。

 死は年齢を選びません。死にゆく本人はもちろん、家族にとっても死は常に事件であって、死別者の抱えるグリーフ(悲嘆)は依然、大きな問題です。しかし家族は大きく変容し、バラバラになった。ひとり死も増え、悲しみが共有できなくなっています。お葬式が規範にがんじがらめの時代は終わりました。今こそ、生死の現実に向き合う時です。人間関係の原点に立ち返り、自分、家族、そして親しい者たちの問題としてとらえ、選択してほしいと思います。(聞き手・高橋美佐子)

「朝日新聞デジタル 2018年2月4日05時00分の記事」より引用

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