葬儀ビジネスを成功させる3つのポイント、素人・IT・自己中心

夏山の山頂で佇む僧侶
夏山の山頂で佇む僧侶

ITを活用して葬儀の受注を伸ばしている、株式会社アーバンフューネスコーポレーション。これまでのやり方とは一線を期す方法だが、その事業魂には「真理」、「誠」の心は存在するのだろうか。仏道も、経営も、登る道は違えど、得るモノは同じではないだろうか…

葬儀ビジネスの変革

古く、葬儀ビジネスといえるものは、メインが葬儀社であり、その葬儀社にぶら下がって商売をしていたのは、以下のような事業だった。

  1. 司会・飾り付けの人員派遣業の個人・団体(古くは葬列の人員派遣業)
  2. 献茶婦(個人・団体)
  3. 料理業者
  4. 生花業者
  5. テント業者
  6. 霊柩車事業者
  7. バス事業者
  8. タクシー事業者
  9. 遺影写真の加工を行う業者(写真屋兼業も)
  10. 記録写真を撮影するカメラマン(写真屋兼業も)
  11. 葬儀に関する道具、備品を卸す会社(祭壇、幕、他小物など)
  12. 紋入り提灯・紋入り幕製造の業者(仏衣等も)
  13. 棺製造業者
  14. 青竹加工業者
  15. 他、儲かる匂いに敏感な業者

ざっと並べてみたが、これらは葬儀を施行する際に必要とされた業種がほとんどで、現在は、外注ではなく、ほぼ自社でまかなっているところが多い。それぞれの事業を部門化、または、グループ化、別会社としてコストの削減を行っている。

時代の流れとともに消滅していったのは、会館施行の増加で必要性が無くなっていった紋入り提灯や紋入り幕を作っていた業者。パソコンで簡単に加工できるようになったため、町の遺影写真加工業者も姿を消した。そして、青竹加工業者も、竹祭壇や庭飾りなどが無くなってきたのと共に姿を消そうとしている。

これら葬儀に関連する業者は、専門的なスキルを必要とするものが多く、業界の閉鎖性と相まって発注すること自体がまず大変だった。素人でも葬儀社開業は可能だが、葬儀に必要なモノを揃えるための発注先がわからなかったし、業者が既存の取引先葬儀社へ配慮する背景もあって、新規の取引を始めることに難しさがあった。

トラブルを起こして独立するような者、もしくは、営業エリアが重複する新参者に対しては、葬儀社から取引先へ新規取引しないようプレッシャーをかけていたし、暗黙の了解が存在していた。万一、リスクを冒してでも、内緒で取引を始めようものならば、既存の葬儀社が別の業者と取引を始めてしまい、離れてしまうからである。

葬儀ビジネス、新旧の比較

代表的と思える事例として、2002年から創業した葬儀社のアーバンフューネスコーポレーションを取り上げてみる。この会社の年間施行のうち、90%が自社ホームページへの問合せからの受注で、ネットを活用したビジネススタイルで大きく成長した会社である。

株式会社アーバンフューネスコーポレーション
代表取締役社長兼CEO 中川 貴之 Takayuki Nakagawa 

1996年明治大学政治経済学部卒業。結婚式プロデュース会社、株式会社テイクアンドギヴ・ニーズの立ち上げに参画。役員として株式上場に携わる。2002年10月葬儀業界へ転進を図り、株式会社アーバンフューネスコーポレーションを設立、代表取締役社長に就任。
2012年1月最高経営責任者として、代表取締役社長兼CEOに就任。明海大学非常勤講師。

この会社の役員には、経歴から見る以上では、泥臭い葬儀屋出身のたたき上げっていうパターンはない。取締役副社長兼COO加藤氏でも、半年の葬儀社研修ぐらい。この会社の立ち上げの背景には、どこか葬儀社が協力してきた匂いはするが、その色合いは全く見えない。

で、現在の葬儀ビジネス成功の秘訣は、この素人なんですよ。古くからやってきた葬儀の世界では、独立して事業として成り立つのに必要とされた時間は10年とも言われていました。町会とのつながりを持ち、お寺さんともお付き合いを深め、病院にも営業を行う。それぞれのネットワークを通じて葬儀を「斡旋・紹介」してもらう事によって受注を得ていたのです。

そのため、それらのネットワークが形成され、機能する中で、葬儀施行でメシを食っていけるようになる件数は、当時、年間60件がまず第一ハードルで、年間100件を超えるためには、もう一つ上の人的ネットワークが無ければなし得なかったと言われてきました。死亡者率で見た場合、市単位のネットワークでないと、町会単位の付き合いでは達成できないのです。

ところが、IT環境が整い、ネット上での情報がたやすく手に入る時代になると、これが一変しました。店舗がなくとも、葬儀会館がなくとも、ネットから受注し、葬儀の施行を行えるようになったのです。この時、既存の葬儀社も同じ環境にありましたが、この専門性と閉鎖性が災いし、柔軟な発想と活用するという行動が生まれてこなかった。

葬儀ビジネス、第一のポイントは素人である事

葬儀に対して素人ゆえに、施行技術や人的ネットワークに頼らず、集客に特化して戦略を考えることができたのです。ある者は葬儀社を営む事を選択し、ある者は葬儀紹介業社や終活事業者を選択した。先に掲げた株式会社アーバンフューネスコーポレーションは葬儀社を選択して、頭の固い、センスのない葬儀屋さんを出し抜くことに成功したのです。

いわば、円の中心事業を選択したのは面白いというか、若干の共感も覚える。これまでの葬儀社がIT環境が整いかけた頃に、いち早くそこへ投資しなかった。これが絶対的な敗因。それを、いち早くというか、それしかできない素人だからこそ、そこを特化させた。自らが技術や風習などを学んでいる時間をお金で購入(雇用・ハンティング)してしまえば無駄がない。

既存の葬儀社は、ネットで集客できると思っていなかったと言えるほど、この環境や他者の動きを軽視していた。葬儀社出身の独立者は、自分でホームページを作成したりするぐらい。ま、確かにホームページ作成が高かったのもあるが、ネットが仕事を、金を生むという感覚には乏しく、道具を購入する、施設を用意する方へ資金を持って行ったのです。

第二のポイントIT

現在、IT環境を整え、資金を投入する事は必須項目なのだが、未だ、葬儀業界のお粗末な状況は変わらない。なぜ、葬儀屋さんは見えないもの、効果に時間のかかるものにお金をかけないのだろう。特に、関西の葬儀社はこの傾向が強い。売上を上げる能力も高い。新しい葬儀のスタイルを発信する能力も高い。なのに、形のないモノには、なかなか銭はかけない。

パソコンを世界と繋げる道具とは考えず、ワード、エクセルなど、社内用の書類を作るための道具としか活用していない。そんな風にも思える。要は、ケチなんやわ、きっと。だって、必要やって言うても、パソコンすら購入してくれないところもあるし、自前で持ってきている人間も多い。稟議書もなかなか通してくれないし、金持ったら、使うの嫌いなんやで。

そんな事やってるから、後発の事業者にどんどん抜かれて、主導権を握られていきますんやで。ええ加減、気付けよ。(笑) 先に出てきた阪急電鉄の葬儀部門も、南海電鉄葬儀部門も、イオンさんにしても、皆さん素人はんでっせ。いつまでも、看板で仕事入ってくると思てたら大間違いでっせ!

第三のポイント、自己中

これ、大事です。とにかく自分が一番と思っていないとダメ。先人がすでにやっていようが、既成事実であろうが、自分が開発したぐらいの厚かましさがなければ成功しない。先の株式会社アーバンフューネスコーポレーションもホームページで言ってますやん。どこでも言ってそうな内容の事を。

適正な価格以外にも選ばれる理由(ホームページより引用)

  1. 「費用に安心していただけるよう、すべての費用を契約前にご提示します」
  2. 「一度きりのご葬儀で後悔しないように、自社社員が安定した品質でお手伝いします」
  3. 「お通夜・告別式だけでなく、前後も無料サポートします」

こんなん、今までにどこでも聞いてきたような言葉やんけ、何て、バカにしてはいけません。これを、白々しく、さも自分達が初めてやってますよってぐらいの勢いがなければいけません。なぜって? だって、業界目線でモノを見ていてはダメなんです。この言葉を初めて見る人もいるんです。その人にとっては、「なんて、親切な葬儀屋さん」と感じるのです。

ここんところを徹底的に分析してますからね、この会社は。サイトを訪れた人がどのような行動をとるのか。そこらじゅうにトラップを仕掛けてますから。で、そのデーターを元にすぐに改良を重ねる。この会社にとって大事なのは、葬儀会館を建設する事でもなく、葬儀技術を向上する事でもなく、いかにサイトへ集客し、その客を逃がさないかなんです。

素人・IT・自己中、この三種の神器が揃えば、鬼に金棒って訳ですよ。これまでの葬儀屋さんが負けてないのは、アピール力はない自己中の精神ぐらいか。もっと、終活事業者ぐらいに、ボランティア的な、非営利活動をやってますのよ、私どもはってくらい、テキトーなアピール力を付けないと負けますよ。

番外編:実は葬儀ガイドの突っ込みをしたかったのです

先ほどから話題にしている、株式会社アーバンフューネスコーポレーションが、今年、新たに「葬儀ガイド」なるものを開始した。ITを活用して葬儀受注をコンスタントに上げている会社としては、今更って感じがするんだけど、

プラン比較サイト:“情報開示”遅れた葬儀業界 IT化進めて透明性高める

 首都圏で葬儀事業を行うアーバンフューネスコーポレーションは7月から、葬儀情報を紹介する情報サイト「葬儀ガイド」をスタートした。

 葬儀ガイドには、全国の葬儀社、葬儀事例などが掲載されており、ユーザーは複数の葬儀社の葬儀プランを比較検討することで、信頼できる葬儀社を選ぶことができる。葬儀事例には、実際に行われた葬儀の会場写真が複数掲載されており、故人が好きだった日本酒や花、思い出の品物などが飾ってある様子も見ることができる。

小さなお葬式とかの葬儀紹介事業者のコンセプトに、葬祭ディレクターを指名できる機能と、一定額の押し付け型から、自由価格競争による商品ラインナップを重視した方向なんかなぁ。ビジネスモデルとしては、そこしか隙間が空いてなかったような狙い所のように見える。

「業界横断型の情報サイトはこれまでありませんでした。葬儀業界は他に比べてIT化が遅れていた。直葬など低価格化が進んでいますが、料金だけでなく自分の価値観に合った葬儀をしてほしいという思いから立ち上げました。年内に全国2千社の参加を目標にしています」

って、あるんだけど、現在、施行内容を登録しているのは、ほぼアーバンフューネスコーポレーションだけ。ディレクターもそう。なぜ、今になってこのようなサイトをやろうと思ったのか、ちょっと引っかかるところがありますなぁ。こんなの今更するなら、もっと早くから紹介業にも精を出してれば、みんれびぐらい軽く追い越せたでしょう。

アーバンフーネスの業績推移1期(03年)から13期(15年)まで
アーバンフーネスの業績推移1期(03年)から13期(15年)まで

うがった見方をする三日坊主は、この11期から13期の、業績の伸び悩みが背景にあるのかなと感じています。ITを駆使し、素人の発想の自由さを活かし、自己中な主張を活用してここまで来たが、伸びが鈍化している。現在の事業スタイルの壁が見えてきたのかな。その焦りがあると見ます。

しかも、このサイトを管理するのが葬儀社。登録するのも葬儀社では、登録・受注にかかる費用に対して見合うだけの施行が入るかわからない。サイト管理側は、受注者の状況、個人情報が丸見え、汚い言い方をすれば、金額の出る施行かどうかの受注をコントロールできる立場にある。そんなところへ登録するのは仲間だけじゃないかな、透明性がなさすぎるので。

やはり、葬儀の仕事に絶対は無いのが救い

以前にも申し上げておりましたが、葬儀屋さんて、一件の施行単価が高いので、すぐに年商は億を超えて、会社としての体裁が整わない、法人としての自覚がないままに、いっぱしの「企業」のような気分になってしまうのです。すると、「大きな会社」なんて、勘違いが始まる。会社として心身ともに成長していないのに売上が先行しすぎるのです。

年商20億を超えるには、やはり社会が必要とする企業ポリシーが根底にあり、事業そのものが社会的な貢献を担い、世の中の役に立つ事。そして、文化の継承を担える資質がなければ、どこかでギクシャクしてくる。そこで働く人々にも幸せを提供できなければ存在意義はない。結局、錬金術士の軍団では、会社を育てて売り抜けるかぐらいしかなくなってしまう。

そういう意味で言うと、ビジネスのネタとして葬儀はやりやすいとは思うけど、人の命、その人生の意義、生きる事の決まりごと、自然のエネルギーに存在する法則(私は、これを宗教と思うのですが)を、大切にした仕事でないと持たないのではないかと思うのです。システムを構築し、0と1だけの世界観では収まりきらないのが葬儀(宗教)ではないかと思うのです。

名経営者は事業道で悟りを得ていたはず

色即是空 空即是色だけで、形がなくなって全てが無になるというのは無理と感じます。上手く言えませんが、0(ゼロ)は無ではない、無に対座するものが存在すると考えないと、この世界が存在することすら否定してしまうように感じるのです。

葬儀社、葬儀関連業者の多くの起業家が、IT業界の寵児のようにもてはやされますが、今では当たり前と思っている0(ゼロ)ですら有史以来、はるかな時間を経て使用するようになった世界です。0(ゼロ)は無と考えるコンピューターの世界観を、命を祀る、葬送儀礼を行う人間の気持ちや心の在り方にあてはめる事業だけでは、どこかで伸び悩むのではないかと。

新しいアイデアを考案し、利便性を上げて、情報をいち早く伝え受注を得る。確かにビジネスにおいてこんなに便利なものはない。でも、経営者の心に存在する価値観が、会社を形成し、社会に評価される。恐らく、正しいものしか生き残らないのではないかと私は思っています。

この地球という星の上で生きていくなら、どこかに自然の法則というか、決まりはあると思うのです。それを見つけ出し、気付く事ができれば… 仏教ではこれを悟りというのでしょうし、神道では神ながらの行き方を実践する行為になると思います。

そんな事を根底に持ち、商売の道を極め、その正しい事業を世に広める事が、修行僧のような経営者の生き様が、自然の摂理に合っているなら、きっと後世に残る事業となり、歴史に名を残すような経営者になれるんじゃないかな。

苦労してモノを作り、売ってきた時代から、アイデアと知識とパソコンがあれば数億稼げる世界になった時代。葬儀業界からは、松下幸之助氏のような経営者は出てこないかもしれないですね。

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