今更ながらシリーズPart5、そこが変だよ! 遺影写真編

遺影写真。これ、そのものには御霊が入っているモノではないけど、故人を象徴するだけに大切に扱いますよね。まさか、片手で持って「はいっ」って訳には行かない。祭壇でも中央にうやうやしく飾りますもんね。

遺影写真の歴史

そもそも、昔の葬儀ではご本尊と位牌だけで、遺影写真なんて用いませんでした。遺影用の写真を残しておこうとの行為自体は明治頃にはあったそうですが、葬儀の場に登場するのは気軽に写真を撮れるようになってからですから、昭和の話です。

私が葬儀の仕事に入った頃(昭和60年前後)は、まだ白黒で遺影写真を作成する事が多かったのです。父母・祖父母の皆さんが仏壇を挟んで、ズラーっと写真額で飾られて凄んでましたから、みなさん一様に「おじいちゃんらと同じにしとこか?」って感じでした。

着せ替えの衣装は紋付袴、もしくは喪服で家紋を入れます。なので、家紋の種類と名称を知らないと仕事になりませんでした。見積りに行く時にはカバンに小さな家紋帳が入ってましたし、本屋さんで「日本家紋全集」みたいなのを見つけると、「おぉ、見やすいし、種類が多いやんけぇ!」なんて、興奮して買ってましたし。

それから1〜2年ほどして徐々にカラーで作成することも増えてきまして、それに伴い、着せ替えの衣装もスーツやドレスなどに変わってきました。紋付や喪服でカラー仕上げではこれまでの白黒と見栄えが変わらないし、葬儀屋的にも料金に見合うだけの仕上がり感を出したくてよくお勧めしていました。

現在では、スキャナーに写真を載せて、加工会社と直接回線で繋がっている葬儀社のパソコンを遠隔操作して加工します。仕上げの指示はFAXで送り、最終的にその仕上がりを確認してから大型プリンターで出力します。

これが導入される前は、預かった写真を加工会社に持ち込んで依頼し、再度、そこへ取りに行くという、非常に手間のかかる事をやってました。通常で3〜4時間ぐらい、混み合うともう少しかかりまして、この届けと引き取りを葬儀屋さんがやってました。

設置から出棺まで

さて、そうやって出来上がってきた遺影写真ですが、パネル写真が用意されていない場合、その遺影をうやうやしく祭壇の中央に飾ります。手袋まではしませんが大切に持ってゆっくりと置きます。

通夜・葬儀と祭壇に鎮座し、焼香のたびに皆さんと目線が合う。その時、その遺影写真を見て、在りし日の故人を偲びます。

儀式が終わり、お別れ・出棺となるのですが、この時にまず棺をお別れしやすいところへ安置します。蓋を開け、花を切り、悲しみの中でお別れの時間が過ぎていきます。

その頃、別のスタッフは出棺のための準備をします。出棺の際、位牌を素手で持つことになるので、足の部分に半紙を折ったものを巻いて貼ります。不浄を避けるためだと言われますが、なぜか最初に祭壇に置く時には素手です。(笑)で、準備ができたら、先ほどまで皆さんが焼香をされていた台の上に置いたりします。

一方、遺影写真は祭壇から下ろして準備するのですが、最近は、祭壇用にはパネル写真を飾りますので、あらかじめリボンと花飾りなどをつけて出棺用にと用意しておいたものを、同じく焼香台などに置きます。

さあ、準備は完了。お別れが済めば位牌と写真は遺族に持っていただいて、棺を先導しながら厳かに霊柩車まで進むだけです。

ここからが、業界の不思議な常識

ここでよくあるのが、以前からそうしているからそうするという、業界のおかしな常識が発動します。

出棺の準備をした遺影写真を、上向きに寝かして置くって担当者が結構いるんです。位牌は足が付いているから立つので大丈夫。遺影写真は倒れては困る、倒れやすい、だから倒れないようにと寝かしておこうって考えるんでしょうね。

おまんらの頭の中はどうなっとるんじゃ! ってよく思ってました。だいたい、渡しやすいようにと下ろしておくのですが、私は決してそんな事はしない主義で、下ろして準備をしたらもう一度、祭壇に飾っておきなさいと言ってました。

出棺で位牌と遺影写真を忘れる事なんて絶対にありえない。これで倒れるなら、お別れの際の悲しみで祭壇に倒れかからない限りありえない。それで倒れたからとなっても、皆さん事情は理解して下さいますよ。

いざ出棺って時に、厳かに下ろして遺族に手渡せばいいのですよ。それにかかる時間て大した事はない。むしろ、そこを演出する方が儀式らしさが出ると思うんですけどね。

小さな気遣いができるかどうかが見えてきます

これが葬儀屋の中にある不思議な常識なんです。私が葬儀の仕事についてから5年が経った時にも、10年経った時にも、15年経った時にも同じ事をする人は絶えなかった。会社が変わっても同じです。大阪だけでない、全国でも同様です。

要は、それをする意味を考えていない、工夫をしないから、何となく今までそうしているからこうって感じなんです。モノの意味を考えずに行動するから、なぜかちぐはぐな事をする。

どこもかしこも、「遺族の立場に立って、親身にお世話をさせていただきます」なんて事を言いますけど、これもみんなが言うから真似しているだけなんでしょうね。意味もなくメッセージを発したところで何なのって思います。

同様に、切り花を入れるカゴを地面に置いているヤツも結構います。あなたは料理のお皿も地面に置きますか? なんてよく注意しましたが、これを意識しない担当者がいる葬儀屋さんってどうかなとも思います。気遣いってのは、そんなところを大事にする事なんですが、葬儀屋さんの常識はちょっとした所がずれているんですよ。

遺族の立場ではそんなところまで気付かないと思いますが、お別れから出棺までちょっと離れた立場で同席する機会があればよく見ていてください。それがその葬儀屋のレベルで、自分の葬儀を頼めるかどうかの判断になると思いますよ。

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