エンバーミング受注率が100%達成⁈ 湯灌受注でも100%は無いのにどういう事?

壁の前で悲しむ少女
壁の前で悲しむ少女

エンバーミングという遺体保全技術があります。遺体の損傷を修復し、腐敗を防ぐ処置を行うもので、日本ではあまり馴染みのない技術です。最近、この施術の導入にとてつもなく力を入れている葬儀社がいくつかあり、その思惑を探ってみます。

関西は馴染みが薄いんですわ

関西ではエンバーミングまでの処置を行わず、湯灌施行の方が馴染みが深い。これは古くから納棺の際に行ってきた「清め」の意識がうまく融合し、その部分を専門家にお任せしようかって感じが強いためです。

奈良県や和歌山県もそうでしたし、大阪府下でも古く納棺の行為は家の方が葬儀組(同業・隣保)と協力し、その長老が指示をする中で行っていました。

葬儀の本(葬儀マナー入門なんてやつ)がよく書店に並んでいた時代には、納棺の前に清めの儀式をなんて説明がよく載ってまして、「清潔な桶に逆さ水を用いて行います」などと説明がありましたねぇ。

最近ではこのような本も見かけませんし、葬儀社の担当者でもそんな事を知らない人もいます。逆さ水とは真水に熱いお湯を入れて温度を調節するやり方で、他にも屏風を逆さまに置いたり、死装束も左前で着せるとか、通常とは逆さまの事をする習わしが残っていたからです。胸元には小刀の代わりにカミソリを置いたりもしていました。

ただ、このような風習は、初めて葬儀に携わった昭和60年台前後ではボチボチ残っていた程度です。まして、屏風がある家なんて珍しいし、そろそろ葬儀会館建設ラッシュの時期ですから徐々に会館の霊安室での安置というケースも増えてきたからです。

気になるお値段は? まずは湯灌から

湯灌料金は安ければ6万円前後、高ければ10万円以上請求するところもあります。湯灌を行う資格にも特別なものもなく、専門業者が行う事もあれば、葬儀社が設備を持ちそこのスタッフが行うケースもあります。

よく受注したいがために「最後のお風呂に入れてあげましょう」なんて葬儀担当者もいますが、基本的に湯灌は衛生上、遺体に対して良い事なんて何もありません。低温で保持するならまだしも、温度の上昇は、皮膚の表面に付着している微生物や菌などを増殖させる可能性も高いし、不要な体温の上昇を招くので、体内の腐敗を進行させる可能性が高いからです。

実際に湯灌業者もそこのところは理解していますから、温度を抑え、長く時間をかけないで済ませ、最終的な着せ替えと、綺麗な顔立ちになるように仕上げるところに重点を置いています。いわゆる「さっぱり感」を出せるような技術です。

私は売る方が専門でしたので専門業者へ発注のケースでしたが、受注がない場合は担当者が清めの儀式や着せ替えをしないといけない。湯灌が盛んになってきた頃の葬儀社のスタッフは着せ替えもできない人も多く、できないからか面倒くさいからか、高く売りつけた仏衣などの死装束を上からかけるだけ。納棺にも儀式らしさもない。

こんなので「納棺料金」なんて請求する業者はやめといたほうがいいけど、実際に納棺してみないとわかりませんしねぇ。それなら多少高くても湯灌業者にしてもらう方が絶対にいいと思います。彼らの所作は遺体に対する尊厳を保っているし、それを見ている多くの方は感謝と感動のリアクションを返されるほどの丁寧さがありますから。

で、エンバーミング100%受注する技って何なの?

このような湯灌でも受注率100%なんてまず無理です。強制的にという行為がなければ、また騙し的に説明を端折って、いかにも最初からそれをありきのプラン料金設定でも無い限り無理です。(でも、エンバーミング受注率100%って事は、逆に言えばそうしているから達成できるのかなぁ… あぁ、怖っ)

確かにエンバーミングは少々金額はかかりますが、体内の血液を抜いて防腐剤を注入し、体液や腐敗を起こしやすい消化器官内の残存物を吸引・除去する事で腐敗の進行を遅らせるので、長期間、遺体を安全な状態に維持する事はできます。

人や動物などは死後、消化酵素や体内中の微生物によって分解、いわゆる腐敗が始まるので、ドライアイスでの処置などでは限界があるというか、それを止めるにはほとんど意味がないのです。冷んやりさせておく程度であって、見た目にはそれほど変化がなくとも、体内や表面では菌が活発に活動し腐敗は進行しています。故人と過ごす時間を安全に保つ意義ではエンバーミングに勝る方法はないのです。

な〜んて力説されれば「そうか、じゃ」と思っていただける可能性は高いけど、それでも100%は不可能だと私は思います。料金も日本では全社統一価格で上限を15万円と定めているそうですけど、基本料金を10万円ほどにしてメイク料などを上乗せして20万円を請求する事もあるし、施術に伴う施設までの往復の搬送料金なども勘案すると、相当な金額が必要なのです。が、100%!

もう一つ! IFSAが推奨する維持期間は10日から2週間程度は安全に保たれ、50日までに火葬・埋葬を行うように指導しているのですが、これは何かしらの事情があって葬儀を行うまでに非常に長い時間を必要とするケース。(日本で死亡、海外へ搬送など。逆は技術や基準が違うので一概に同じとは言えない)

日本の風習としては遺体を長期間置くという概念は薄いのです。共産国のように偉大なる指導者の死後、エンバーミングを施し、メンテナンスを重ねて未だに展示?されている。そんな事を目指すならともかく、通常は死後、数日の内に火葬まで至ります。葬儀屋さんも会館の都合上、数ヶ月も式場に遺体を展示?されちゃ困るでしょう。

なのにです。受注率100%なのです。す・ば・ら・し・い・・・ てか、ありえない。

午前中にエンバーミング施設へ搬送し、その日の午後に火葬ってなんて事もあるそうで、そこまでしないと達成しないだろうな。ま、IFSAが説明するエンバーミング処置の役割で、

エンバーミング処置の4つの役割

  1. 消毒・殺菌
    感染症の原因となる病原菌・ウイルスの有無にかかわらず、危険な感染を防ぐために、ご遺体の消毒・殺菌を行います。
  2. 腐敗の防止
    ご遺体は、死後すぐに体内から腐敗が進むので、できるだけ早く薬剤で腐敗防止を行わなければなりません。処置を施すことにより、臭いもほとんど感じられなくなります。
  3. 修復・化粧
    処置を施すことにより、生前の安らかなお顔を取り戻し、故人に対してご遺族の心にいい思い出を残せるようになります。
  4. 心ゆくまでのお別れ
    衛生的に安全となったご遺体と心ゆくまでゆっくりとお別れできます。10日から2週間程度は安全に保たれます。

特に3の理想形を追求するからこそ、葬儀屋さんは受注に励むんでしょうね。4はあまり関係なさそうだし…

業界の事情 エンバーミングは窮地を救うか

葬儀単価の下落に歯止めをかけたいと各社躍起になっています。施行件数を伸ばそうと会館を建てまくる時代も終わった感があるし、他社との違いを打ち出そうと思っても、そんなに代わり映えしない。何か新しい価値観を創造して付加価値をつけてお金を頂戴しないと、何て考える経営者にとって、エンバーミングは打ち出の小槌のように思えるのかな。

私はエンバーミング施術を行うべきとは思います。遺族だけでなく、葬儀従事者の衛生管理と安全性の確保は大切な事案だと思うからです。遺体に触れる機会は遺族に比べて多いし、いくら仕事とはいえ、職場に安全が保証されない限り満足のいくサービスの提供はないと思うからです。

せっかくの技術が普及しにくい背景には日本の風習もありますが、関西での湯灌受注率で見る限り、風習と価格とのバランスが取れれば可能性はあると思うのですが、売上を補填する項目として扱うとせっかくのチャンスを失うのではと懸念します。

同じ轍を踏むのが大好きな葬儀業界

いつも同じ轍を踏む。これが葬儀業界の慣習です。お手頃な料金設定で無理な受注をしない。これが長持ちさせる秘訣だと思うし、その技術の施術意義を守るためには、安全と安心の観点から満足のいく説明が必要なんですよ。無理すると説明を端折る社員も増えますから逆方向へ行く。

遺族側にしても、純粋に遺体処置の意義を理解し、自分にできない事をお願いする真摯な気持ちならまだしも、遺族の無関心化が進む環境では「お金を払って遺体の処置を人に任せる」機会が増えてきますし、お金を払う事でその行為から逃れる言い訳にもなり得る場合もあります。

そんな中、安易な受注に励む事で葬儀の本義を見失う事に拍車をかけるようでは、葬儀紹介業者の台頭を許して文化を崩壊させる事に追従している現在と同じ結果が待っていると、100%の受注結果から見て、私は想像しますけどね。

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